イラストレーション

透明水彩を前にすると、ワクワクが止まらなくなる、時もあるし、そうじゃないときもあるけど。
今日は気分的に描きたくなったのだ。
筆を持ち、紙の白さを見つめるたび、まるで新しい世界が「早く扉を開けて」と語りかけてくるような気もする。
今回描いた「紫水の魔女」も、そんな小さな鼓動から始まった作品だ。
1. ペンと水彩絵の具のノウハウ ― “にじみ”を味方にする技法
水彩の魅力は、コントロールできそうで、なかなか難しい。
最後の1%だけは思いどおりにならないところだと思う。あえて、その不自然さをいかにも、という感じで見せられる。
今回は鉛筆でアタリをとってから、ペンで必要最小限の輪郭を取るところから始める。
細かな描き込みはせず、あえて“曖昧さ”を残すことで、水彩の流れを受け止める余白を作った。
絵の具はホルベインを使用して、青~紫系統と似たりよった色を中心に、深みを出していくのがいい。
紫は“感情の影”を、青は“静けさ”を象徴してくれる色。
その二つを水で溶かし、同時に紙の上へ流し込むと、想像していなかった色の表情が生まれてくる。
にじみをコントロールしたいときは、紙にあらかじめ水をつけた筆で塗ってから色を塗っていく。
逆に、ランダムな広がりを生かしたいときは、紙が乾ききる前に濃い色を落とす。そうすると、滲みが広がるのだ。
2. 試行錯誤の過程 ― 想像と現実の間で揺れながら
「紫水の魔女」というテーマが浮かんだ時、最初はもっと幻想的な姿を想像していた。
流れる髪、柔らかい布、包み込むような霧……頭の中では完璧なイメージが立ち上がっていたけれど、紙の上ではそう簡単に形にならない。
筆を動かすたび、色が思わぬ方向へ広がり、形が崩れ、魔女の姿がぼんやりしてくる。しかし、そこで「失敗したな」と感じる瞬間こそ、水彩との一番大事な対話だと思っている。
色が流れてしまったなら、その流れに意味を与える。形が崩れたなら、そこから新しい物語を生み出す。
こうして試行錯誤するうちに、最初に思い描いていた“端正な魔女”ではなく、もっと静かで、もっと人間的で、どこか儚い姿が浮かびあがってきた。
「予定通りの完璧」ではなく、「予測できなかった美しさ」。
水彩をやっていると、こういうことがあるし、こういう良さが生きる。
3. 得られた感情 ― 寂しさと温度が同居する絵
絵が形になり始めた頃、胸の奥に不思議な感情が芽生えた。
寂しさ、静けさ、そしてあたたかさ。
紫はどうしても“孤独”の色に見えることがある。そして幻想的だ。
でも、この絵の魔女は、孤独でありながら、どこか見守っているような穏やかさも持っている。
包まれているような布の流れは、彼女自身の感情そのものを抱きしめているようで、描きながら自分自身の心まで包まれていく感覚になった。
絵を描いていると、時々「これは自分の気持ちの反映かもしれない」と気づく瞬間がある。今回の作品はまさにそれだった。
紫と青のまじり合いは、迷いや揺らぎそのもの。でも、その上に重ねた柔らかなラインは「まだ前に進める」という小さな希望にも見えた。
4. 感動と経験 ― 思い通りにならないから、最後に輝く
制作の終盤、筆を置いた瞬間に胸に湧いたのは、達成感というよりも「ここまで導いてくれてありがとう」という感動だった。
水彩は最後まで思いどおりにいかない。
でも、だからこそ、完成したときの喜びが他のどの画材よりも深い。
ペンを使っているから安心して描ける部分もあるけれど、最終的に画面の主導権を握るのは水彩のにじみ。自分の中の“計画”と“偶然”が混ざりあい、二度と同じ絵は描けない。この一回性こそが、原画の価値であり、制作を続けたくなる理由だ。
この絵を仕上げたことでまた一つ、自分の表現の幅が広がった感じがする。
「紫水の魔女」は、ただのキャラクターではなく、今回の制作そのものを象徴する存在になった。
5. 挑戦 ― まだ見たことのない世界へ
絵を描くたびに思う。
“次はもっと自由に描けるかもしれない” “もっと深い世界を表現できるかもしれない”
今回の作品を描き終えて、また新しい挑戦がしたくなった。
透明水彩で描ける世界は、まだまだ広い。もっと大きな作品、もっと細かな表現、もっと大胆な構図。やりたいことが次から次へと浮かんでくる。
「紫水の魔女」は、その最初の扉を開いてくれた気がする。
絵を描くことは、自分と向き合うこと。
水彩の流れと心の揺れが、そっと重なる瞬間がある。
その時間が、何よりも尊くて愛おしい。
あなたに、この感覚がそっと背中を押してくれますように。