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【静けさを描く】水辺の森が見せた一瞬のまぼろし

RYOTA TAKANO

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Illustration

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描き方

まず画材です。

ホルベイン水彩絵の具

ホルベインウォーターフォード細目 F4サイズ

ホルベインソフトパステル

絵具でザックリと書く。ソフトパステルで上乗せするので、ぼんやりで大丈夫。
ソフトパステルは、叩くように色を乗せていくといいかもしれない。
描くようにするとゴッソリ粉がつく可能性がある。難しい画材だと思った。

水彩を広げるとき、私はいつも「今日はどんな景色が生まれるんだろう」と少しだけ胸が高鳴る。
絵を描くという行為は、私にとって “風景を迎えにいく旅” みたいなものだ。
そして今回の作品は、まさにその旅の途中で出会った、静かな森の一瞬の記録。

最初に筆を走らせたのは、水辺の深い青だった。
青と緑の境界線はいつも予測できない。水のようにゆっくり混ざったり、突然弾けるように滲んだり……。
その偶然性が水彩の醍醐味で、何度描いても飽きない理由だと思う。

しばらく色を眺めながら乾き具合を確かめていると、湖の奥に “白い森” の形がゆっくり浮かび上がってきた。
木々を描くときは、大きく描かずに、あえて細く、軽く筆を動かす。
白い幹が暗い背景に立ち上がると、まるで霧の中から木々が姿を現したように見えてくる。

そしてこの絵を描いている最中、ずっと感じていたのは「音のない世界」だった。
森の奥深くで、風の音も鳥の声も届かないような…ただ、湖面だけがわずかに揺れている時間。
自分の手を動かしながら、まるで絵の中に吸い込まれるような、不思議な感覚だった。

色を少しだけ濁らせたブルーグリーンは、水底に沈んだ石や影を表している。
透明な水彩でも、こうした “曖昧な影” を作ることで、風景に深さが生まれる。
木々の黄色い葉は、ほんの少しだけ明るい色を置いて、光が差したように見えるようにしている。

仕上げの段階で、私はいつも絵と少し距離を取る。
全体の空気がひとつにまとまっているか、余計な線はないか、呼吸を止めて確かめる。
この絵を離れて見たとき、湖面がふわりと揺れたように見えて、思わず小さく息を吐いた。
「あぁ、今日はこの風景に出会えたんだな。」
そんな気持ちになれた。


絵を描く時間は、私にとって現実から少しだけ外れた、静かな場所へ行く方法。
誰かに見てもらえるなら、それはなおさら嬉しい。
わずかな時間でも、この森の静けさに触れてもらえたら、そんな幸せなことはない。


水彩は本当に気まぐれで、思い通りにならないことも多い。
でもその予測不能さが、風景の“生まれる瞬間”をつくってくれる。
今回の絵も、偶然と意図が重なってできた、小さな奇跡みたいなものだ。


また新しい景色を描けたら、ここで紹介したい。
水彩の旅は、まだまだ続いていく。

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