Art

ラクガキ:ラフスケッチの描き方|人物デッサンを段階的に考える思考プロセス

要約

段階的な思考

完成させないラフの価値

線の迷いそのものが表現になる





はじめに:ラフは思考の痕跡

今回のブログでは、この一枚のラフスケッチを題材に、「どのような段階を踏んで描いているのか」を整理して書いていきます。完成絵ではなく、あくまで途中段階の線ですが、だからこそ見えてくるものがあります。ラフには、絵描きの思考・迷い・試行錯誤がそのまま残ります。今回はそれを隠さず、むしろ価値として言語化してみます。






全体構想:一枚の中で視点を切り替える

まず最初に考えたのは、「一人の人物を、複数の視点から捉える」という構想です。下には横顔、上には後ろ姿。これはキャラクターデザインというより、人体の把握や空気感の確認に近い意図があります。一枚の中で情報を完結させず、断片を並べることで、見る側に補完を委ねる構成です。

この段階では、完成を目指す意識はほとんどありません。むしろ「考えるために描く」状態で、線の美しさや正確さよりも、配置とバランスを優先しています。







アタリ:重心と軸を取る

最初に入れている赤い線は、いわゆるアタリです。頭から背骨、骨盤へとつながる中心線を意識し、身体の重心がどこにあるかを確認します。特に後ろ姿では、肩の高さの違いや首の傾きがキャラクターの感情に直結するため、ここは丁寧に探っています。

この時点では、筋肉や服の構造はほとんど考えていません。「立っているのか」「少し前に体重がかかっているのか」といった、大きな流れだけを掴むことが目的です。






シルエット:形の印象を固める

次に行うのが、シルエットの確認です。灰色の線で、肩幅、胴体の厚み、コートやマントのような外形をざっくりと乗せています。ここでは細部よりも「遠目で見たときにどう見えるか」を意識します。

シルエットが弱いと、どれだけ描き込んでも印象に残りません。逆に、線が荒くてもシルエットが強ければ、それだけで絵として成立することもあります。このラフも、あえて描き込みすぎず、形の勢いを残しています。







顔の向きと表情:横顔で感情を探る

下側の横顔は、キャラクターの内面を探るために描いています。正面顔よりも横顔の方が、鼻筋や顎のライン、視線の方向によって感情をコントロールしやすいからです。

目は描き込みすぎず、あくまで位置と角度だけを意識しています。表情を固定しないことで、「このキャラはどんな感情にも転びうる」という余白を残しています。







服と装備:情報量は後回し

首元や肩周りには、服や装備の名残のような線を入れていますが、ここはまだ仮置きです。資料を見ながら正確に描く段階ではなく、「この辺に情報が乗る」というメモに近い感覚です。

ラフの段階で情報量を増やしすぎると、後から修正しづらくなります。そのため、この工程ではあえて曖昧さを残し、描き直しやすい状態を保っています。






線の強弱:描きながら選別する

ラフとはいえ、すべての線を同じ強さで描いているわけではありません。重要なラインは自然と何度もなぞられ、不要な線は一度きりで終わっています。結果として、後から見返したときに「残す線」「捨てる線」が見えてきます。

この選別作業も、ラフの重要な役割です。描きながら考え、考えながら線を減らしていく。その繰り返しが、次の工程につながります。





まとめ:ラフは完成への準備運動

このスケッチは、単体で完成させるためのものではありません。あくまで、次の一枚、次の工程に進むための準備運動です。だからこそ、整っていなくていいし、迷いがあっていい。

ラフを「未完成なもの」と捉えるのではなく、「思考が可視化された状態」と考えると、描くこと自体が少し楽になります。今回のブログが、ラフを見る・描く視点を広げるきっかけになれば嬉しいです。