
森の奥で、ふと視線が合ったような気がした。
深い青の羽をまとったフクロウは、静かに佇みながら、こちらをまっすぐ見つめてくる。
今回描いたのは、その“まなざし”の印象が残った一枚だ。
水彩絵の具は、にじみと偶然が絵をつくる。
どれほど計算しても、水と色が出会った瞬間には、いつも小さな奇跡が起きる。
その漂うような揺らぎが、フクロウの沈黙とよく似ていると思った。
■ 使用した道具
・ホルベイン水彩絵の具
・ホワイトワトソン 水彩紙(細目)
・鉛筆(下書き用)
・丸筆、水、パレット
どれも扱いやすく、発色とにじみの美しさがしっかり出る組み合わせ。
ホルベインの青系は濃度の調整がしやすく、羽の重なりを作る時にとても便利だった。
■ 描き方の手順(Wet in Wetで背景を作る)
① 鉛筆で軽く下書き
最初に、フクロウの“目の位置”だけは丁寧に決める。
視線がズレると印象が変わるので、ここは慎重に。
② 背景を水で濡らす
紙全体に水を含ませ、絵の具が自由に動ける状態を作る。
今回は 緑〜ターコイズ系 を中心に、柔らかくにじませた。
森の湿度や静けさを作りたかったからだ。
③ フクロウの羽を描く(青を中心に)
青はただの“寒色”ではなく、深さや静寂を表す色。
水を多めに含ませた筆で軽く置き、乾く前にさらに青を重ねると、
羽毛が風にゆれるような濃淡が出る。
顔まわりには黄・茶を少しだけ。
これを入れると生命感が一気に強くなる。
④ 仕上げに細部を締める
完全に乾いてから、目のハイライトと輪郭を少しだけ整える。
この“少し”が大事。描き込みすぎると、水彩の空気感が消えてしまう。
■ 今回のポイント
背景のグリーンがフクロウを包み込み、
青い羽の濃淡が“夜の静けさ”を連れてきてくれた。
水彩は、整えるよりも任せる時間が長いほど、絵が美しく育つ。
今回も、にじみの形や境界の揺れが、思っていた以上に自然な雰囲気を作ってくれた。
■ こんな人におすすめの描き方
・水彩のにじみを活かしたい人
・フクロウや動物の質感を描きたい人
・背景に空気を入れたい人
・ホルベインやホワイトワトソンの発色を試したい人
Wet in Wetは難しいようで、やってみると意外と“水が勝手に良い方向へ連れて行ってくれる”技法。
リラックスしながら描く方が、色の表情が出る。
■ おわりに
青いフクロウを描きながら、
“静けさの中でも、色はちゃんと息をしている”
そんな気持ちになった。
絵は、描いているときの空気まで閉じ込めてくれる。
水彩が好きな人、これから始める人にも、
この一枚が少しでもインスピレーションになればうれしい。
また新しい絵を描いたら、ここに残していきますね。